人事院は8月8日、給与等に関する報告等を行い、給与減額措置前と比較し月例給については官民較差が小さいこと、一時金については支給月数が民間と均衡していることから、改定はしないとした。給与改定勧告を行わなかったのは、1954年以来である。
 一方で、2006年に給与構造改革に関する勧告を行ってから8年が経過し、社会経済情勢の変化や国家公務員給与については一層の取り組みを進めるべき課題が種々生じてきているとして、@地域間の給与配分の在り方、A職務や勤務実績に応じた給与等、給与制度の総合的な見直しについて検討を進め、早急に成案を得ると報告した。
 2006年に実施された給与構造改革と同様に、地域間・世代間の配分が見直しの柱に据えられており、給与構造改革完了から2年しか経ていない今日において、さらなる見直しの検討を行うことは、到底納得できるものではい。とりわけ地域間の較差については、検証を終えたばかりであるにもかかわらず、新たな比較方法を持ち出して較差を編み出した手法は恣意的という他ない。また、再任用者の給与制度について、具体的な措置の提案が見送られたことは残念であるが、雇用と年金の確実な接続と、再任用制度の確実な実施などを目指し、取り組みを強化する。

給与勧告の骨子
 
本年の給与勧告のポイント
月例給、ボーナスともに改定なし
@ 月例給の較差について、給与改定・臨時特例法に基づく給与減額支給措置による減額前の較差を算出し、併せて減額後の較差も算出
減額支給措置は民間準拠による改定とは別に東日本大震災に対処するため、本年度末までの間、臨時特例として行われているものであることを踏まえ、昨年同様、減額前の較差に基づき給与改定の必要性を判断
減額前の較差(0.02%)が極めて小さく、俸給表等の適切な改定が困難であることから、月例給の改定は見送り
A 公務の期末・勤勉手当(ボーナス)の支給月数は、民間と均衡しており、改定なし
上記給与減額支給措置が行われていることを勘案
給与制度の総合的見直し
減額支給措置終了後に、俸給表構造、諸手当の在り方を含む給与制度の総合的見直しを実施できるよう準備に着手
@ 民間の組織形態の変化への対応
A 地域間の給与配分の見直し
B 世代間の給与配分の見直し
C 職務や勤務実績に応じた給与
T. 給与勧告の基本的考え方
国家公務員給与は、社会一般の情勢に適応するように国会が随時変更することができる。その変更に関し必要な勧告・報告を行うことは、国家公務員法に定められた人事院の責務
勧告は、労働基本権制約の代償措置として、国家公務員に対し適正な給与を確保する機能を有するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤
公務には市場の抑制力という給与決定上の制約がないことから、給与水準は、経済・雇用情勢等を反映して労使交渉等によって決定される民間の給与水準に準拠して定めることが最も合理的
 
U. 民間給与との較差に基づく給与改定
約12,500民間事業所の約49万人の個人別給与を実地調査(完了率88.6%)
*民間給与を広く把握し、公務員給与に反映させるため、本年から調査対象を全産業に拡大
〈月例給〉
公務と民間の4月分給与を調査(ベア中止、賃金カット等を実施した企業の状況も反映)し、主な給与決定要素である役職段階、勤務地域、学歴、年齢の同じ者同士を比較
月例給の較差について、給与改定・臨時特例法に基づく給与減額支給措置による減額前の較差を算出し、併せて減額後の較差も算出
月例給の較差
  (給与減額支給措置による減額前) 76円 0.02%
  (給与減額支給措置による減額後) 29,282円 7.78%
行政職俸給表(一)…現行給与(減額前)405,463円 平均年齢43.1歳
                   (減額後)376,257円
官民較差が極めて小さく俸給表及び諸手当の適切な改定を行うことが困難であることから、月例給の改定は行わない
勧告の前提となる官民比較については、給与減額支給措置は民間準拠による水準改定とは別に東日本大震災に対処するため、本年度末までの間、臨時特例として行われているものであることを踏まえ、給与法に定める給与額に基づき実施
〈ボーナス〉 昨年8月から本年7月までの直近1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間の支給月数を比較
公務の支給月数(現行3.95月(減額前))は、民間の支給割合(3.95月)と均衡しており、改定は行わない
給与減額支給措置が行われていることを勘案
(参考)減額後の公務の支給月数3.56月分相当
 
V. 給与制度の総合的見直し等
給与構造改革に関する勧告を行ってから8年が経過し、我が国の社会経済情勢は急激に変化。国家公務員給与については一層の取り組みを進めるべき課題が種々生じてきている
 国家公務員の給与に対する国民の理解を得るとともに、公務に必要な人材を確保し、職員の士気や組織の活力の維持・向上を図っていくため、俸給表構造、諸手当の在り方を含め、給与制度の総合的な見直しについて検討を進め、早急に結論
民間の組織形態の変化への対応
部長、課長、係長等の間に位置付けられる従業員についても来年から官民比較の対象とする方向で検討
地域間の給与配分の在り方
地域の公務員給与が高いとの指摘。地域における官民給与の実情を踏まえ、更なる見直しについて検討
民間賃金水準の低い全国1/4の12県の官民較差と全国の較差との率の差は実質的に2ポイント台半ば
世代間の給与配分の在り方
地域間給与配分の見直しと併せて、民間賃金の動向も踏まえ、50歳台、特に後半層の水準の在り方を中心に給与カーブの見直しに向けた必要な措置について検討
職務や勤務実績に応じた給与
人事評価の適切な実施と給与への反映
人事評価の適切な実施が肝要。昇給の効果の在り方等について検討
技能・労務関係職種の給与の在り方
業務委託等により行政職(二)職員の削減が一層進められることが必要。直接雇用が必要と認められる業務を担当する職員を念頭に民間の水準を考慮した給与の見直しを検討
諸手当の在り方
公務の勤務実態や民間の手当の状況等を踏まえ必要な検討
給与構造改革における昇給抑制の回復
平成26年4月1日の昇給回復は、45歳未満の職員を対象とし、最大1号俸上位の号俸に調整
   
W. 雇用と年金の接続
閣議決定を踏まえ、各府省において現行の再任用を活用した雇用と年金の確実な接続を図る必要
雇用と年金の確実な接続のための取り組み
職員に対する周知、希望聴取
再任用職員の能力と経験をいかせる職務への配置等
再任用に関する苦情への対応
高齢期雇用を契機とした人事管理及び行政事務の執行体制の見直し等
再任用職員の給与
再任用職員の俸給水準や手当の見直しについては、公的年金が全く支給されない民間再雇用者の給与の実態を把握した上で、再任用職員の職務や働き方等の実態等を踏まえ検討
民間では、公的年金が全く支給されない再雇用者の給与水準を一部支給される再雇用者の給与水準から変更しない事業所が多く、転居を伴う異動の場合に単身赴任手当を支給する事業所が大半
年金支給開始年齢が62歳に引き上げられる平成28年度までには、再任用の運用状況を随時検証しつつ、本院の意見の申出(平成23年)に基づく段階的な定年の引上げも含め再検討がなされる必要
 
X. 適正な給与の確保の要請
給与減額支給措置が終了する平成26年4月以降の給与については、本年の報告に基づく民間準拠による給与水準が確保される必要。国会及び内閣に対し、勧告制度の意義・役割に深い理解を示し、民間準拠による適正な給与を確保するよう要請
 
2013人事院報告に関わる自治労見解
 
1. 人事院は8月8日、官民較差が76円、0.02%と極めて小さいことから月例給の改定を見送り、一時金についても民間と均衡していることから改定しないとする報告を行った。あわせて、給与制度の総合的見直しを検討することを表明したほか、配偶者の海外転勤に伴う離職への対応のための配偶者帯同休業制度について意見の申出を行った。給与改定勧告を行わなかったのは、物価下落の下で勧告を保留した1954年以来である。
2. 自治労はこの間、「地方自治を守り、地公給与決定に国の介入を許さない取り組み」を全国統一闘争として展開しながら、公務員連絡会に結集して人勧期の取り組みを行ってきた。公務員連絡会は人事院に対し、勧告に当たっては十分交渉・協議し、合意に基づいて行うことを要求し、その他、再任用職員の給与制度上の措置の検討や、非常勤職員の制度と処遇の改善、超勤縮減などの重点課題を設定し、中央行動等を実施しながら交渉を強化してきた。
3. 人事院は、給与制度の総合的見直しの検討について表明し、地域間・世代間の配分の在り方や、職務や勤務実績に応じた給与、技能・労務関係職種の給与水準などについて検討を行うとした。2006年に実施された給与構造改革の完了から2年しか経ていない今日において、さらなる制度見直しを検討することは拙速である。とりわけ地域間の較差については、昨年人事院自らが、較差は「収れんしてきている」として検証を終えたばかりである。それにもかかわらず、新しい比較方法を用いて恣意的に較差を編み出し、合理的な説明がなされないまま制度見直しの検討が進められようとしていることは到底納得できない。
4. 地方公務員給与に関して、自民党は「J−ファイル2013」の中で、「地方公務員の地域における民間賃金と同水準となるような給与の適正化、市場化テストの積極的な活用による公共サービス改革の推進及び定員削減など、地方行革を推進し、総人件費を抑制」、「地方における民間給与をより実態的に調査するよう、人事院に求める」としている。今回の給与制度の総合的見直しは、こうした意向を受けた地方公務員給与に対する攻撃であることは明らかである。自治労は、公務員連絡会に結集し、見直しの必要性を含めて十分交渉・協議し、合意を前提とすることを強く求めていく。
5. また、この間の「地公波及阻止」の取り組みにより、7月の給与削減実施には一定程度歯止めをかけることができたものの、9月議会等にむけてなお厳しいたたかいが想定される。自治労は引き続き、国による給与削減の強要を許さない取り組みを強化するとともに、人事委員会勧告にむけた対策に万全を期し、適正な給与水準の維持を求めていく。
6. 同時に、公務員制度改革における自律的労使関係については、「十分な議論が行われていない」として、労働基本権の回復に反対する従来の姿勢を変えていない。長期にわたる検討を経て、公務員制度改革の具体的な制度設計はすでに完了しているのであり、こうした人事院の対応は認められないものである。
7. 政府・自民党による地方公務員給与へのさまざまな圧力に対し、自治労は今後も組織の総力を挙げて抗して行かねばならない。そのため、2013自治体確定闘争を「産別統一闘争の再構築」の契機と位置づけ、統一行動への結集と全単組での「要求―交渉―妥結(書面化・協約化)」の交渉サイクルの確立をめざし、賃金闘争を強化していく。また、雇用と年金の接続にむけ喫緊の課題である再任用制度の確実な実施など、労働諸条件の改善にむけ2013確定闘争に全力で取り組む。
2013年8月8日 全日本自治団体労働組合