民主党が「政権交代」をめざし、全力で闘った昨年の衆議院議員選挙。その注目候補の一人だったのが長崎2区の福田衣里子さんだ。実名を公表し、薬害肝炎訴訟を闘い抜いた経験と『命』に対する熱い思いが彼女を立候補へと駆り立てたのだ。そして、か細い身体で連日連夜、選挙区を駆け回り『命をつなぐ政治を』と訴えて見事当選した。今、国会という場にステージを移し、『命』を救うための闘いを再びスタートした福田議員。昨年の秋、臨時国会の会期中という忙しいさなか、思いを伺った。


まずは肝炎対策基本法


 この臨時国会で肝炎対策基本法という法律を制定しようとしています。すべての肝炎患者の救済につながる法案ですから、民主党をはじめ各党のご支援やご理解をいただくことができ、ようやく成立の見通しとなってきました。これまでの肝炎の問題でも民主党はもちろん共産党や社民党の先生方、公明党にも応援いただきましたし、これからも引き続き応援してくださると思っています。やはり命の問題ですので。
※肝炎対策基本法は11月30日に成立した。


やるべき事へ一直線


 たとえば薬害の被害者であるのに被害者と認められない方たちが多くいます。20年以上、薬害問題を放置したつけですね。せめて安心して治療ができるようにしたい。だいたい治療費が月に10万円近くかかります。それが1年から1年半という期間ですから、家族や子どもを抱えながらだったり、学生だったりという人には相当な負担になります。実際、そういった方が治療の機会を失っているという現状があります。誰でも安心して治療が受けられるように、きちんとした治療体制や医療費助成の拡充を真っ先にやりたいと思います。
 理不尽な原因で発生したのがこの薬害肝炎なんですが、薬害だけじゃなくて輸血やツベルクリンなど予防接種時の注射針の使い回しといった原因でも肝炎は起こっています。結局は薬事行政や血液行政、医療行政の怠慢、不作為、厚生省の後手後手の結果なんです。ほかの国ではちゃんとした対応をしているのに、なんら対策をとってこなかった。そのため、今60人に1人が肝炎に感染しているという、国内最大級の感染症を生み出してしまったと思うんですよね。ですからきちんと対応策をとらなければいけないんです。


社会に役立つチャンス


 肝炎の問題がようやく片付いた後、各地から講演会などに呼んでいただいて、いろんな現場の方や病気で苦しんでいる方にお会いしました。そこでさまざまな問題を知ってしまったというか知らされたというか。そんなときに立候補の話があったんです。最初はずいぶんちゅうちょしました。でも行政や国を動かすことができれば、苦しまなくてもいい人が苦しんでいる状況を変えられる、これはチャンスだと。こんな自分でも何か社会の役に立てるかもしれないって思いました。薬害肝炎の問題で頑張れたのも、ひとつはそこだと思いますし。それにここでおじけづいたら10年後、20年後に後悔するだろうなと思ったんですよね。


慣れない選挙活動に苦労


 選挙に出て驚いたのは、最初のころ選挙スタッフに女性が一人もいなかったこと。スタッフはみんな男性で、どんな服を着ていいのかというような相談もできない。スタッフの方も女性の候補者は初めてだからわからないんですよね。体力の面でも男性並みの扱いでしたし。それに長崎2区は高齢の方が多い土地柄、最初は若い女性に何ができるんだって言う空気がすごくあって。「若い」っていうのは仕方ない、でも「女」は関係ないだろって思ったりしていました。でもそんななかで大勢の人たちに応援していただいて。80代のおじいちゃんおばあちゃんが、みんな孫みたいに応援してくれたのが、すごくありがたかったですね。だからこそ選んでよかったと思ってもらえるように頑張りたい。一番身近で支えて、力を与えてくださった地元の人たちに、「なんも役にたっとらん」って言われないように、きちんと成果を残したいって思います。


埋もれていた問題に取り組む


 女性議員同士の連帯は生まれてくると思いますね。少子化対策だったり、女性の労働環境の問題だったり、DVの問題だったり、女性しか感染しない病気だったり。男性議員が取り上げにくい問題が今までたくさんありました。また問題を抱えた女性も、これまでは言っていく場がなかったと思うんです。たとえば薬がネットで買えなくなるということでも、薬局で買いづらい買えないという女性の方たちが困っていますし。そういった男性じゃ気付かない細かい部分を取り上げていきたい。だいたいこれまで女性が抱える問題は社会の問題とならなかったんですよね。20代とかの若者の問題も同様です。結局、女性とか若い政治家がいなかったからです。埋もれている問題がたくさんあると思います。


基本はやはり「命をつなぐ政治」


 やっぱり命あってこその人生ですから。なおかつ健康でなければ。元気だったら何でもできるって思いました。働いて税金も納めることもできますし。健康と教育というのは国を発展させるために一番欠かせない部分です。そこに今まで投資してこなかった、その結果が今みたいな格差社会や希望を失うような世の中を生み出してるって思います。根本に立ち戻って愛のある政治、真心のある改革っていうものを行っていかないといけないときだと思います。


 少女のようなあどけない表情の奥に垣間見える堅い決意。国会議員としての活動が一回りも二回りも福田議員を大きく育てるに違いない。これからの活躍に注目したい。

衆議院議員福田衣里子

1980年、長崎市生まれ/1999年、広島修道大学(人文学部人間関係学科心理学専攻)入学/2000年、ヨーロッパへ一人旅に出る/2001年、C型肝炎ウイルスへの感染が判明/2002年、同大学中退/2004年、薬害肝炎九州訴訟で実名を公表し原告となる/2008年、厚生労働省「薬害肝炎事件の検証及び再発防止の為の医療行政のあり方検討委員会」委員、薬害肝炎九州原告団代表就任、民主党長崎県第2区総支部長/2009年8月30日、衆議院議員選挙・長崎2区で初当選