提供:機関紙編集者クラブ

知られていなかったアスベスト被害

 アスベスト被害が連日マスコミをにぎわせている。新聞でも盛んに解説記事があるが、少しだけ触れておこう。
 アスベスト(石綿)を吸引したことが原因とされる病気「中皮腫」を医学辞典などで調べてみると、必ず「まれながん」とか「発症は非常にまれ」と説明されている。そしてアスベストを吸引してから発症するまでの潜伏期間は20年から50年といわれる。しばらく前まで、呼吸器を専門とする医師でさえ、教科書で知っているだけで、患者には出会ったことがないのが普通だといわれたぐらいだった。その病気がいまどんどん増えている。
 1995年に年間500人がこの病気で死亡し、件数は着々と増え、2003年では878人が死亡している。そして深刻なのは、専門家の予測によると日本の男子に発症する中皮腫に限っても、これから10万人が死亡すると推計されていることである。
 なぜそんなことが分かるのか。日本がアスベストを大量に輸入し、建築材料などに使用したのが1960年代から90年代前半にかけてであることが分かっており、日本より20年ぐらい早く大量使用し健康影響が大問題となったヨーロッパやアメリカの例で、発症のリスクを測ることが可能だからである。
 もう一つの大問題は、死亡者数がこんなに増えてきているのに、労災認定の件数が少ないということだ。878人が死亡した2003年で労災として認定されたのはわずか83件。これも原因が推測できる。被災者にとって仕事のときにアスベストを吸ったのは何十年も前の話だし、お医者さんもどんな仕事でアスベストを吸ったのか分からないから、労災保険が受けられるとアドバイスをしようもない。そもそも退職してから長い時間がたっているから、かつて仕事をしていた会社のほうもそんな昔の話は知らないというわけだ。
 アスベストは、建材や吹き付けなどの建設関係から、自動車のブレーキ関係部品、船舶や鉄道車両の断熱材のような代表的なものに含まれるだけでなく、意外なものにも含まれている。たとえば子どもの頃にコンクリートに絵を描いて遊んだ「ろう石」には、不純物としてアスベストが混入している。実際、これを石筆として長年使用していた労働者の中皮腫は、労災認定を受けている。
 アスベスト問題は過去を問い、未来も問い続ける。

連合近畿労働安全衛生センター      
事務局次長 西野方庸(にしのまさのぶ)