提供:機関紙編集者クラブ

危険なときと安全なとき

 洗濯機が最後の脱水を終え、いよいよ止まりそうだ。朝の忙しい時間、完全にドラムの回転が止まっていなくても、ふたを開ければ機械が急停止してくれる。そそくさと洗濯物を取り出して…。
 確かにそうだ。日本の全自動洗濯機は、脱水のために高速回転をしていても、ふたを開ければスーッと止まってくれる。だから危なくない。しかし、この仕組みは世界共通ではない。メーカーは販売国によって、安全装置の仕組みを変えている。安全に対する考え方とそれに基づく規制が異なるからだ。
 たとえば、アジアのある国では完全に回転が止まるまで、ふたがロックされ開かない構造でないと販売することができない。なるほど、急停止することになっていても、そのスイッチの回路が故障したら止まらないこともある。それに対して回転が止まるまでロックされる構造ならば、故障でふたが開かなくなることはありそうだが、その逆の可能性は少なくなる。
 「危険なときには停止する仕組み」と「安全なときにだけ動く仕組み」どちらが安全と考えると、機械の安全対策は考えやすい。前者は、動いているのが普通で、後者は停止しているのが普通だから、何か異常が起こったときのことを考えると、間違いなく後者の方が安全ということになる。
 昨年、機械の安全についての包括的な安全基準がISO(国際標準化機構)によって規格化された。簡単に言うと、機械の設計者は危険源を同定し、そのリスクを評価し、許容できないリスクについては低減措置をとり、除去できなかったリスクについては使用上の情報をユーザーに提供するというものだ。
 洗濯機のような家庭で誰でも使う機械なら当然で、そういう対策がされていない製品などは市場から追放されるだろう。しかし、職場で特定の作業者が使う場合であっても、安全対策がよく分からない怪しい機械が存在してはいけないのである。
 EU(欧州連合)は1989年に、安全衛生の改善促進に関する理事会指令を出し、1992年末までには各国の法制度にリスクアセスメントの体系を取り入れるなどの整備が行われている。規制のみに基づく安全衛生対策から、自主的な職場で働いている人に情報がいきわたり、その参加でリスクが低減される安全の仕組みが、重大災害が多発するいまの日本に必要なのである。

連合近畿労働安全衛生センター      
事務局次長 西野方庸(にしのまさのぶ)