ホタル(蛍)

 すでに古事記に「ホタルが夜身(よみ)を輝かせて飛んでいた」という記述があります。また、万葉集に始まる幾百幾千の歌に詠まれていることを考えると、今も昔も人は「ホタルの儚(はかな)い光」に惹(ひ)かれていたようです。
 ホタルと言えば、夕暮れの空が刻々と闇と融合し、一体となった闇夜の清流に、ふわふわと不思議な動きで舞う美しいこん虫。細く美しい光りの帯が、幾重にも幻想的な光りの道を描く、つかの間の日本の風物詩。
 世界中のホタルは、約2100種類を数えると言われ、日本でも約45種類のホタルが生息しています。なかでも、わたしたちに馴染みの深いのが「源氏ボタル」と「平家ボタル」。この2種のホタルのように、幼虫の時代を水中で過ごすホタルは、世界的に類を見ないそうです。
 かつてホタルは、諸所で見ることのできる身近なこん虫でした。今では、ホタルの生息できる清流は本当に数える程になってしまいました。再び、ホタルの儚(はかな)く美しい光りが日本中で瞬く日が来ますように。

※ホタル=「火垂る」「星垂る」といったホタルの自然情景から起こった名称。ホタル科のこん虫には光らないホタルも多数いる。